竹原市の町並み 
旧下市・旧中町・旧上市
地図


本町通り上市の町並み
 広島県の中央部の南、瀬戸内海に面した町が竹原市である。
室町時代の竹原は木村城に本拠を置く、竹原小早川氏の勢力下にあり、港(馬橋古市)もおおいに発展したが、賀茂川の土砂の堆積から、船の運航に不便をきたし次第に港は下流に移った。そして河口・新開地に市場集落・下市が形成されていった。
寛永15年(1638)の地詰帳によると屋敷地は寺山の西麓を南北に通ずる上市・中町・下市とそれに通じる小路の両側に集中し、商人や諸職人が居住していた。それらの商人の中から、港町と村落市場の性格を生かして資本蓄積を行い、有力商人が出現するのである。
江戸時代になると瀬戸内海沿岸では、海面埋め立てによる新田開発が盛んに行われる。
ここ竹原を領した広島藩でも、正保3年(1646)から賀茂郡代官鈴木四郎右衛門の指導のもと、遠浅の入り江を干拓して大新田の築造が行われたが、塩気が強く耕作には適さなかった。窮余の策として鈴木四郎右衛門は赤穂から二人の製塩技術者を招き、製塩を試みたところ見事に成功し、慶安3年(1650)に塩田が造成されて以来、広島藩の経済政策によって増産され、竹原は芸備地方一の塩の産地としての地位を確立した。
竹原の塩は広島藩内はもとより、北前船で全国の市場へ送り出されたが、それに伴って廻船業も盛んになり港町としても賑わった。そして亨保5年(1720)頃に、最盛期を向かえた竹原の製塩はその後横ばいを続けていたが、明和2年(1765)には最盛期の半分になってしまった。製塩法の変化は竹原の塩田も縮小に向かわせ、昭和5年からは塩田の埋め立てが始められ、昭和35年に塩田は全て廃止され、竹原は製塩の町としての歴史を閉じた。
古い町並を構成している町は江戸時代は下市村といい広島藩であった。下市村の戸数・人数は元禄6年(1693)656軒・3535人。他に塩浜戸数422軒。安永2年(1773)戸数861軒。明和9年(1772)の人数3915人。天明6年(1786)の人数4018人であった。
竹原の古い町並みは、往時の経済力をバックに現在見るような町並みが形成されたわけだ。本町通り(上市・中町・下市)とその周辺には本瓦葺の古い町並みの景観が左右に長く続き、そして古い町並みの向こうには、かっては海だったが、干拓され塩田になり、今は市街地となった竹原の街だ。
町並みを歩くと、江戸時代に建てられた本瓦葺の屋根、中二階で漆喰塗り込めの虫籠窓、又は出格子を漆喰で塗り込めたもの、千本格子、荒格子、時には珍しく力強い与力格子の商家など、特徴のある豪商の邸宅、商家が軒を連ねる。
町並みの中心の本町通りは、西方寺の山に沿ってゆるく曲がっている。曲がりの北端は恵比須社、南端は町家に突き当たり直角に曲がり、全体の見通しを妨げている。近世初期の町造りの特徴だ。
その中で公開されている松阪家住宅(市文化財)は、唐破風で「てり・むくり」の流れるような屋根が大きな特徴の商家だ。入り母屋造り、平入り、本瓦葺、うぐいす色の漆喰塗り込めで菱格子も塗り込められている、中二階、彫刻の入った出格子、与力格子もある重厚で華麗な豪商の家だ。江戸時代末期の建物を明治12年に改築したもので、屋号を「沢田屋」といい、薪問屋、石炭問屋、製塩業、酒造業、醸造業も営んでいた。
一部を酒の資料館として公開している造り酒屋は、享保18年(1733)に酒株を得て酒造業を始めた。以来260余年営々とその家業を守り現在に至っている。主屋は安永頃(1772〜80)の建物で、入り母屋造り、妻入り、本瓦葺き、黒壁、中二階の塗り込めの虫籠窓で、同じ入り母屋造りの黒漆喰塗り込めの妻入りの建物を3っも連棟させている珍しい建て方の商家である。一番南の建物は明治期の銀行の建物である。
他にも春風館(国の重要文化財)、復古館(国の重要文化財)、頼惟清邸は県史跡で、頼山陽の祖父、惟清が紺屋を営んでいた家で、安永4年(1775)頃の建物。主屋は入り母屋造り、中二階、白漆喰塗り込めの虫籠窓、本瓦葺き、妻入りであった。
元本陣格の商家は元録3年(1690)建築で、本陣門、御成座敷が残っている。主屋は片入り母屋造り、片切り妻、本瓦葺き、平入り、黒壁で二階にも塗り込めの大きな出格子窓が付いている。広島藩主が回郡のときには本陣に利用されていた。これらの重厚な商家が残る町並みは、製塩で築いた富のなせる技といってよい。
町並み指数 90
参考文献     
  竹原の町なみ  竹原市竹原教育委員  会鈴木 充  昭和57年
  広島県の歴史散歩  山川出版社  広島県歴史散歩研究会  1992年
  歴史の町並み事典  東京堂出版  吉田桂二  1995年
  歴史の町並みを歩く  保育社  高士宗明  平成6年
  山陽・山陰小さな町小さな旅  山と渓谷社  山と渓谷社大阪支局  1999年
  角川日本地名大辞典  角川書店  角川日本地名大辞典編纂委員会  1989年    
別画像(2010.02.06)


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