下津井の町並み 
西町・中町・東町・吹上・田ノ浦
地図


吹上地区の町並み
  江戸時代、北前船で繁栄した港町下津井。西国大名の参勤交代の御座船や、北陸・奥羽諸藩の参米、特産品を積んだ船、讃岐の金毘羅船などが風待ち、潮待ちに来港して、港は活気に溢れた。
とくに北前船が来港するようになる江戸時代中期以降は、港はぎっしりと船で埋まり、大変な賑わいを見せるようになる。しかし明治の中頃になると、船も大型化して航路も変わり、交通機関の近代化が進むにつれて、北前船そのものが無くなってしまった。そしてその後の下津井は、漁業の町として静かに時を刻んできた。
宇喜田直家や秀家が美作・備前の二国を支配した頃(天正元年1573〜慶長5年1600)の下津井城主は、直家の家臣で浮田河内守である。城の規模はわかってないが、砦のようなものであったろう。関ヶ原の戦い後、宇喜田氏に変わって岡山に入った小早川秀秋の頃には、秀秋の老臣平岡岩見守頼勝が城代になった。
慶長8年(1603)には池田輝政の子 忠継が備前領主となると、赤穂城代から移った池田出羽守長政が城を預かり、下津井城を改修し、同時に城下町の整備にも力を尽くした。
その後城主はたびたび交替したが、代々ほぼ3万2千石を領した。寛永16年(1639)に一国一城令によって取り壊され、ときの城主池田由成は天城(現倉敷市藤戸町天城)の陣屋に移った。
下津井は城下町ではなくなったが、その後も発展の一途を辿るのである。内海航路の船が下津井を経由し、参勤交代の西国大名の御座船が寄港し、特に江戸中期からは西回り航路の北前船もがこの地に繁栄をもたらした。
享保6年(1721)の「備陽記」によると、下津井村の家数は262軒・人数1965人・船数99。元禄年間(1688〜1704)には町分と村分の分かれ、町名として東町・中町・西町・立町・上町があったようだ(備陽記)。寛政10年(1795)の家数は町分45軒・村分546軒、人数は町分204人・村分2629人であった。寛政4年(1792)の「船路記」によると町場の長さ五町と記されている。
北前船も時代の流れに沿って変化が見られる。はじめは北国の大名が、大坂へ米を運ぶのにこの船を利用して、日本海から瀬戸内海に入る航路(西回り航路)を開いた。その後近江商人が蝦夷地まで北前船を使って進出した。さらに時代が下がると船主は近江商人に限らず、北国の廻船業者、さらに上方あるいは瀬戸内海の業者も加わった。
下津井の背後地の備中・備前の干拓地では、塩分を含んで米が栽培できなかったので、水と肥料があれば栽培できた綿花などの換金作物が多く作られた。これには多くの肥料が必要であって、北前船によってニシン粕・干鰯が大量に持ちこまれた。
北海道の函館・江差・小樽・釧路・根室などで船腹いっぱいに肥料のニシン粕、干鰯を積みこんだ。他の荷物はニシン、数の子、昆布、鮭、タラなどだった。
こうして年間5〜60隻の北前船が下津井に寄港した。多い年には80隻にもなったこともある。
収穫された綿は加工されて繰り綿、綿糸、反物あるいは衣服・帯・紐・足袋などの製品になり、北前船によって売りさばかれてのは勿論である。こうして北前船の来航が、児島の繊維産業のルーツになった。これによって下津井・吹上の問屋や商人も大きな富を蓄積することとなり、窓・格子・壁などに工夫を凝らした母屋や大型のニシン蔵を競い合って建てた。これらの建物が最近の町並み保存へとつながっている。
また、北前船に加えて、四国への通路としても町を賑わした。江戸時代も後期になると、金毘羅・由加への参拝が盛んになり、金毘羅往来をきた旅人は下津井から船で四国へ渡っていった。こうして町には宿場や飲食店が建ち並び、遊里も賑わった。
白壁造りのニシン蔵、鶴井戸や亀井戸などの共同井戸群、由加山・金毘羅への道標があり、細い道沿いに本瓦葺の家屋や土蔵、白漆喰壁・ナマコ壁、虫籠窓、障子にベンガラ格子、ときには卯建の上がった家などの町並みは、今にその頃の下津井の繁栄ぶりを伝えている。
下津井での商家の筆頭は荻野屋で、下津井湊から吹上湊にいたる海辺に、数多くの蔵をもっていて、町の問屋から北前船で運んできたニシン粕を預かる貸倉庫業と金融業で財を成した。「むかし下津井回船問屋」は旧西荻野家の建物で、荻野美術館は東荻野家の建物と荻野屋の蒐集品を展示しているものである。
町並み指数 70
参考文献   
  岡山町並み紀行  山陽新聞社  富阪 晃  1999年
  岡山県の歴史散歩  山川出版社  岡山県高等学校教育研究会  1991年
  歴史のまち下津井  児島の歴史をまなぶ会  大谷壽文  平成9年
  角川日本地名大辞典  角川書店  角川日本地名大辞典編纂委員会  1989年
  岡山県の地名  平凡社  下中直也  1988年

旧西町の町並み

旧中町の町並み

旧中町の町並み

旧西町の町並み

旧中町の町並み

吹上の東荻野家  裏側に美術館がある
古い町並へ戻る