大阪市中央区谷町筋の町並み 
谷町4丁目〜9丁目・瓦屋町1丁目〜2丁目・
上本町西2丁目〜3丁目・安堂寺町1丁目〜2丁目
地図


谷町6丁目の町並
 天正11年(1583)豊臣秀吉の命で築城が始まった大阪城は、石山本願寺の旧地を利用したもので、生玉・玉造・渡辺の地を城下とし、船場や島の内の砂洲を開拓した。
文禄3年(1594)東横堀川を開削し、慶長3年(1598)には天満堀川、慶長5年(1600)には阿波堀川を掘り、西横堀川もこの頃完成している。これら堀川の開削により、外海と大坂市中・淀川筋の水路網が形成され、商業都市としての町づくりが進んだ。東横堀と西横堀の間は船場と呼ばれたが、この頃にはまだ船場は人家が建ち並んでいなかった。慶長17年(1612)と寛永2年(1625)には道頓堀と長堀川が掘られて、この間が島の内と呼ばれるようになった。
大坂冬の陣・夏の陣によって大坂の全市街は焼失してしまい、慶長20年(1615)大坂藩10万石の大名として配置された松平忠明のもとで戦後復興が進められた。この時には上町・北船場・天満で市街復興が進められた。元和5年(1619)から幕府領となり、大坂町奉行所が置かれ、市中の本格的復興が図られた。上町・玉造地区を中心に伏見城下の町108町が移転してきて、大阪城惣構の南限(現中央区谷町6〜7丁目、上本町西2〜3丁目の空堀)までが城下として整備された。
江戸期の大坂の主要道は堺筋で、堺筋と紀州街道を結ぶ接点は日本橋で、そこから南は、秀吉が大阪城から堺へ通うために開いたという南北一直線の街道に沿って開かれた町であるが、その道路から裏側の東も西も一面空地であった。
江戸期の道路は上町台地から西の海港への東西のルートが交通網の主軸で、「通り」と呼ばれる東西の道路が主で、「筋」と呼ばれる南北方向のものは従であった。
大坂は天下の台所と云われ、大坂で取引される最大のものは、米・年貢米などの米市場。次いで米市場と並んで三大市場と云われた青物市場、雑喉魚市場であった。また大坂は工業生産の地としても栄え、同時に全国第一の金融市場でもあった。工業面では住友をはじめとした銅吹業があり、その他鉄加工業やあらゆる工業生産が行われた。
さて、谷町筋に焦点を絞ると、弥生から古墳時代には天王寺辺りから北側に現在の上町台地が岬となって突き出ていた。その西側は大坂湾。東側は河内湾と言うように上町台地は海に突き出た岬であった。
河内湾は淀川や旧大和川の運ぶ土砂によって次第に浅くなり、岬の突端にも土砂が堆積し、陸地化して行った。現在上町筋から谷町筋はほぼ平坦であるが、谷町筋から松屋町筋にかけては坂道であったり、中には道が階段になっていたり、崖になっているところもある。
谷町筋の北部は江戸初期の城下町建設時に伏見から移住した町人町の東端に当たり、谷町筋北部東側は武家屋敷地区であったが、明治維新後は軍事的な施設へ転換され、谷町筋に沿って軍需に応じた制服などの既製服製造業者街として発展した。大正期の谷町1丁目から3丁目は既製服の製造卸し業者が、谷町4丁目から6丁目には小売店が店を構えていた。安堂寺町から谷町7丁目付近には金属製品・機械部品・工具類を扱う問屋が多く、谷町8丁目から四天王寺西門までは近世初頭の都市防衛線の寺院が多かった。
谷町6丁目から7丁目辺りは太平洋戦争で焼けなかったので、古い伝統的な家屋が多く残っている。
今、谷町6丁目と7丁目の境界は空堀商店街である。空堀とは、大阪城の三の丸の外側にあった南惣構堀(城の外郭)、いわゆる空堀があったところで、空堀が城下と城外の境界線の役目を果たしていた。
大正4年ごろから空堀には、地元の延命地蔵の縁日に当たる4の日に夜店が出て、年々盛んとなり大正末には道路も拡張された。戦後は空襲の被害も軽かったので、いち早く立ち上がり、終戦直後の昭和20年9月にはもう空堀商店会を結成し、日用品を主とする商店が軒を並べ大いに賑わい、現在の空堀商店街へ続いている。
この空堀商店街も、又、商店街から脇にそれてもこの辺りには古い民家が多く残っている。戸建の古い民家もあるが、大多数は長屋形式の民家になっていて、多分賃貸住宅であり、その上今の建築基準法では建替えが難しいから仕方なく残っていると思われる民家が多いのは寂しい感じだ。
古い民家は建て方から見て、大正末期から昭和の戦前に建てられたものが大多数を占めているようだ。
又、この辺りは坂の町で、東の上町台地から西に坂になって下っていて、時には道路が階段になっていたりしてビックリする。ただこの町の将来を考えると、戦災に合ってないために、路地が多く区画整理が出来ていないので、古い町並を残すというより、どうしたらいい町並が保てるかを考える必要がありそうだ。
町並み指数 40
参考文献
   大阪府の歴史散歩上  山川出版社 大阪府歴史散歩編集委員会  1990年
   角川日本地名大辞典  角川書店  角川日本地名編纂委員会  昭和58年
   大阪府の地名T  平凡社  下中邦彦  1986年   


谷町8丁目の民家

谷町7丁目の町並

瓦屋町1丁目の町並

谷町6丁目の町並

安堂寺町1丁目の町並

安堂寺町2丁目の町並

内久宝寺町2丁目の町並

空堀商店街の町並
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